兄弟
2000/06/30
今、社会人として生活しています。
今だに釈然としない思い出が一つだけ有ります。
自分には、2つ下の弟がいました。
幼稚園の頃遊んだ楽しい思いで、喧嘩した思いで。
又、小学校の頃遊んだ思い出が鮮明に残っています。
弟は小学校の3年の時に病気(病名不明)で入院し入院先で無くなりました。
その日は、大雨の降る嵐で両親は病院に行っていて一人で留守番をしていました。
自分は、弟の病気がそれほど悪いとは思っていなかったし、ましては、亡くなってしまうなど思いも寄りませんでした。
「ただいま」
弟が一人、元気な声をあげて帰ってきました。
「病気直ったんだ。」
「うん。」
「おとうさん達は。」
「知らない。」
久しぶりに帰ってきた弟を見て非常にうれしくかったのを覚えいます。
「兄ちゃん、お腹空いた。」
「ラーメン作ってあげようか。」
「うん。」
カップラーメンが無かったので、袋入りのインスタントラーメンを作りました。
「できたよ。」
「兄ちゃん、おいしいね。」
2人でラーメンを食べました。
弟のおいしそうに食べる顔を見て何かうれしかったのを覚えています。
ラーメンを食べ終わって、
「おとうさん達遅いね。眠くなっちゃった。」
まだ早かったのですが、自分の非常に眠くなりました。
「久しぶりに一緒に寝ようか」
と、2人で寝てしまいました。
翌朝、起きると父親だけ帰ってきていました。
「おはよう。」
「○○、実はな...。」
父親は、悲しい顔で口ごもっています。
「父さんねぇ。昨日、△△が帰ってきたよ。」
「△△はね。昨日、病院で...死んじゃったんだよ。」
言っている意味がよく分かりませんでした。
「昨日、ラーメン作ってあげたんだよ。」
「やめなさい。△△は、もう居ないんだ。」
怒られて、どうしていいか分からずにいると、
「ラーメンがどうしたって。」
「昨日、ラーメン作ってあげて一緒に食べたんだよ。」
父親を台所につれて行き、テーブルの上に並んだどんぶりを見せました。
「ねっ。2つ有るでしょ。」
父親は、黙ってみています。
そのうち、泣き出してしまいました。
「お父さん、どうしたの。」
その時、テーブルの上のどんぶりを見ると自分が食べたどんぶりは底の方にスープが残っているだけでしたが、弟が食べた?。食べたはずのどんぶりには伸びきった麺が手つかずのまま残っていました。
「あれ。一緒に全部食べたのになぁ。」
父親は自分を抱きしめて、
「△△は、○○に合いに帰ってきたんだよ。きっと、楽しかったんだね。」
と言っていました。
その後、慌ただしく葬儀やら何やらがとり行われ数日があっという間に立ってしまいました。
確かに、一緒にラーメンを食べたはずなのになんだかよく分からずに数日がたったある日、夢に弟が現れました。
「兄ちゃん、ラーメンおいしかったね。」
「○○、お前、死んじゃったの。」
「うん。」
「もう遊べないの。」
「うん。じゃぁ。ばいばい。」
と言って去って行きました。
その時初めて、悲しみがこみ上げてきて弟の死を実感しました。
やっぱり、あの日、弟は帰ってきていたのでしょうか。
それとも幻だったのでしょうか。
今でも、釈然としません。
でも、ラーメンをおいしそうに食べる弟の顔は今でもハッキリ覚えています。
<たいちさん>