親友
2000/10/28
大学時代、友達2人と町中を歩いていました。
すると友達は、
「斉○〜。」
と物凄い真剣な顔で道路の向こうを歩いている同年代の男性を読んでいました。
道路の向こうの男性もこちらに気づき、笑いながらこちらを向いて手を挙げていました。
友達は、ものすごい真剣な表情でした。向こう側の歩道に行くために近くの歩道橋へ走っていました。
私は、友達の走りぷりを目で追いながら、
「借金か何かの取り立てかなぁ。だんだんおもしろくなってきた。」
と思っていました。
歩道橋を渡り終え先ほどの”斉○”の方へ掛けて行く友達を見ていました。
先ほど手を振っていた場所を見るとその人物は既に居ませんでした。
友達は、それでもその場所まで駆けて行き当たりを必死に探し回っていました。 私は、
「逃げれれたんだな。」
とそれからの展開を楽しみにしていたのに残念でした。
それから何分経ったでしょう。友達はまだ捜索しています。
友達の”斉○”に対する重大さが感じられました。
業を煮やし、自分も向こう側に移動し友達の所に行きました。
「もう居ないよ。又、次の機会にあえるよ。」
と言いながら友達の顔を見ると涙を一杯に溜めて何かを言いたそうな悲痛の表情でした。
これは、ただ事でないと思いましたがどうしようもありません。
「取りあえず帰ろう。」
と家路に向かいました。
その途中、友達がボソボソと喋りました。
「あいつなぁ。もう死んでんだ。」
「えっ。」
友達が言うには、その”斉○”は高校時代の親友でいつも一緒に居たそうです。
うれしいときも悲しい時も一緒になって過ごし、家族以上の存在だったそうです。
「一生涯、俺達は友達だ」
と言い合っていた2人でしたが大学入学を期に疎遠になりました。
又、運悪く浪人の身だった”斉○”とはほとんど合わずにいました。
その後、諸々の苦悩の末、自殺したと言うことです。
友人は、その時、”何で力になってあげられなかったのだろう。”と悔やみ脱力感で自分の死のうと思ったらしいです。
「俺さぁ。あいつに何も励ましとか相談にのってやれなかったんだよな。」
と、その時の謝罪とほんとに懐かしいと言う思いで彼の元に行ったらしいのです。
「あいつ、何で出たのかな」
と言っていた友達は次の日、実家に帰ったきり学校には戻ってきませんでした。
私はその時は、何かなんだ分からず、ほんとに死んだ奴だったのか半信半疑でした。
翌年の夏休みに友達の実家に行って来ました。
その時見せてもらった写真の人物は、確かにあの”斉○”でした。
友達の地元の友人の話を聞きましたが、やはり”斉○”はこの世の人では無い様です。
何を訴えたかったのでしょうか。
私も分からないし、友達も分からないようです。
ただ、
「懐かしくなって、合いに来てくれたんだと思うよ。」
と言っていました。
その時の友達の顔はやけに穏やかに見えました。
<chinさん>