踊る娘

2000/07/25


太鼓の音が聞こえてきます。

「ドンドドツッ。ドンドドツッ。」

丁度、西部劇のインディアンの踊りのような音でした。

「うるさいなぁ。今何時なの。」

気持ちの良い眠りを妨げられ小さな怒りを覚えていました。
ふと横を見ると、夫の寝顔は見えますが、2人の間で寝ていたはずの3歳になる娘がいません。
その間、太鼓の音がしています。

「下でテレビつけているな。」

と思い、2階の寝室から そーと1階におりました。

太鼓の音は、テレビに置いてある部屋でなく反対側の部屋から聞こえます。
部屋で誰かが踊っている気配がします。
階段の一番下に腰を下ろして中の様子を伺いました。

中では、真っ暗な部屋の中で踊っている娘の姿が見えます。

丁度、インディアンがたき火を囲んで踊っていると言う言い方が一番ぴったりすると思いますが、そんな感じで踊っています。

娘は、楽しくてしょうがない様に左右前後に誰かいるとでも言う素振りで楽しそうに踊っています。
太鼓の音は聞こえます。
でも、音源になる様なものは置いていない部屋です。
仮に音源となる機器が置いてあったとしても、3歳児に操作できるではずがありません。
何か背筋に寒いものを感じました。

暫くして、階段の明かりを点けました。
その途端、太鼓の音は止み娘の踊りも終わりました。
暗い部屋で立ちつくし私を見ている娘。
私に気が付くと”ニコッ”とした後、部屋の中をしきりに何か探す様にキョロキョロしています。

私は、部屋の灯りは点けなかったのですが、階段の灯りで眩しそうに目をしかめている娘に、

「何で踊ってたの」
「踊ったんだよ。」

と要領を得ません。
3歳児ですから。

その後、娘を抱き上げ階段を上った時、背後のその部屋から何者かの気配を感じました、が、怖いので絶対に見ない様にして急いで寝室に向かいました。

あれはなんだったのでしょう。

以後、その様なことは起こっていません。



マミ子