懐中電灯

 


小学校の時は、カブスカウトに入ってい為、夏になるとキャンプによく行きました。

キャンプと言ってもキャンプ場でのキャンプは少なく(当時は、今の様にキャンプ場が多くなかった)お寺の境内やお寺の裏庭の様なところでのキャンプが多かったと思います。

キャンプの楽しみの1つはキャンプファイヤーです。みんなで歌い、ゲーム等を楽しみ空を見上げると落ちてくるような満天の星空を眺め、楽しかった思い出が蘇ります。

キャンプファイヤーを行うのは、必然的に夜です。その為、移動時は各人懐中電灯で足下を照らしながら移動します。当時は、現在の様なサーチライト的な懐中電灯は少なく、もっぱら、広い範囲をボーと照らすやつが多かったです。

サーチライトの様に遠くの1点をスポット的に照らせる懐中電灯を持つと足下よりも周りの木立、茂み等を無意味に照らし他との違いを見せつけることが多かったと思います。私もそのタイプの懐中電灯を買ってもらい、その日も、無意味に頭上の木、遠くの茂みを照らしていました。

そして、何本目かの高い木を照らしたとき、太めも枝に男の人がしゃがんだカッコウで座ってこちらを見ていました。
懐中電灯の光はあちこちを照らしているのでその男の人は一瞬見えたことになります。

「え!」

再び、今の場所を照らすと、居ました。30歳位の男の人でひどく怖い顔をしています。又、私に対して指を指して何かを言っています。驚きました。

怖くなり、横にいた仲間に、

「ねえ。男の人がいるよ」

と言って仲間と再びその枝を見ましたが、既にその者は居ませんでした。

それから、懐中電灯でむやみに木の上を照らすことはしていません。