廃屋
2000/06/23
友達が、
「いいところを見つけた。」
と満面の笑顔で説明にやってきました。
友達が言うには、裏山の中腹に廃屋を見つけたと言うことでした。
「なかなか、綺麗だし、間違いなく人は住んでいない。」
自分たちの秘密基地に最適と言うことで仲間5人でその場所に向かいました。
途中、お菓子やジュースを買い込み山へと続く細い道を上って行きました。
その廃屋は、言った通りなかなか綺麗で人がいなくなって数年と言う感じでした。
玄関のノブは埃をかぶり、小さな庭は雑草が生え放題で確かに誰も住んでいないようです。
この場所は、山の中腹で回りに家が無く下に見える町並みがとても綺麗に見えました。
「さあ、入ってみよう。」
玄関のドアは鍵がかかっているので、横に回って窓を割り家の中に入りました。
部屋の中は、家具などがそのままで、どれも全て埃まみれになってました。
1階、2階を全て見て回り、一応誰もいない事を確かめて、2階の日当たりの良い部屋でくつろいでいました。
どの位たったでしょうか。
1階からトイレを流す音がしました。
「まずい、誰か帰ってきた。撤収だ。」
5人は、ソーッと1階を伺いがら階段を下ります。
しかし、人がいる気配はありません。
トイレを確認しましたが、便器の水は使用していないため干上がっていてトイレを使った形跡がありません。
「さっき、確かにトイレの音がしたよな。」
5人ともハッキリと聞いています。
日は高い時間ですが何かだんだん怖くなってきて、誰からともなく、
「そろそろ帰ろうか。」
と言うことになりました。
その時、
「トゥルルルー」
と一回だけ電話の呼び鈴が鳴りました。
それと当時に、みんな、入って来た窓へと走りました。
一人ずつ出るので、最後になった自分は気が焦るばかりでした。
その時、自分の真後ろから、
「どちら様ですか。」
とおばあさんの声がし振り向くと無表情な顔をして自分を見ているおばあさんがいました。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
と言いながら窓から転げるように外に出て、来た道を全速力で駆け下りました。
「あの家に、おばあさんいた。」
「えっ、ほんとに。俺、見なかったぞ」
と他の四人は知らないと言います。
「さっき、窓から出るときいたじゃないか。」
「俺、最初に出たから、お前が出てくるのを見てたけど誰もいなかったぞ。お前が何で”ごめんなさい”と言っていたのか不思議だったけどお前が走り出したからみんなも走って降りてきたんだぜ」
と言うことでした。
後日談ですが、数日後知り合いのおじさんにこの事を話すと、
「あの婆さんは、身寄りが無くトイレの中で死んでたんだよな。」
と聞かされ何ともいえない恐怖に襲われました。
この話は、友達には教えてません。
きっと、怖がるから。
<ハルさん>