お地蔵さん

2000/05/26


小学校の頃の遠足に行きました。

片道2km程の行程ですが、全てが山道なのでかなり歩きごたえがありました。
目的地は、ある山の頂上の広い芝生が引き詰められ平地になっている場所でした。
弁当を食べたり、ゲームをしたりと楽しい時を過ごしあっという間に帰る時間となりました。

帰りは、全て下り坂なので楽な行程となります。
自分たちのグループは、固まってお喋りをしたり、ふざけ合いながら坂道を下って行きました。
途中、朝は気が付きませんでしたがお地蔵さんが1体、山道の木の下にいました。

必ずと言っていいほど、クラスの中にはお調子者がいます。
その中でもとびきりのお調子者が自分たちのグループの中にいました。

「帽子をかぶしてやろう。」

とミカンの皮をお地蔵さんの頭に乗せました。

「帽子じゃなくて、かつらだ。かつら。はははっ」

とふざけています。みんなも笑っていましたが、

「お前、罰が当たるよ。」

と注意しました。

「何、言ってるの。真面目人間」

などと、ちゃかされるのでそのままにしてお地蔵さんを後にしました。

暫く、延々と続く坂道を降りて行きます。
すると、前方にお地蔵さんが有りました。
このお地蔵さんも朝には気が付きませんでした。
遠くからでも気が付きましたが、お地蔵さんの頭にはオレンジ色に輝くミカンの皮が乗っています。
みんな無言となりました。

「ぐ、偶然だよ。」

先ほどのお調子者が、お地蔵さんの頭からミカンの皮をはたき落としました。

「前の奴らが、同じ様なことをしているんだ。それか、カラスが置いて行ったんだよ。」

先を急ぎます。 どういう訳か、前にも後ろにも学校の生徒(児童)が見えません。
少し焦ってきたのでみんな歩くペースを早めました。

[.....」

一同立ち止まってしまいました。
前方に、オレンジ色に輝くものを発見下からです。

「そんなこと無いよ。」

そのまま進みました。
一歩一歩進む毎に、想像していたとおりの光景が有りました。
ミカンの皮を頭に乗せたお地蔵さんが。

全員、半泣き状態。お地蔵さんの前を通れません。
後ろから来る生徒を待ちましたが5分ほど経ったでしょうか、やはり来ません。

「みんなで謝ろう。」

全員で、お地蔵さんに対して手を合わせ各々目をつぶりながら謝りました。
その後、坂道を下って行くと前方に自分の学校の生徒の集団が見えました。

「良かった。」

ホッして、学校まで帰りました。
その途中、お地蔵さんには一体も会いませんでした。

学校に帰って、解散の前に先生からのお話があり聞いていると後ろから来た先生が、

「おい、○○、大丈夫か。頭から血が出てるぞ。」

先ほどのお調子者の頭のてっぺんから円を描くようにドロッとした血がべっとり付いています。
本人は、痛みは無い様なのですが頭のてっぺんがざっくり割れていました。

直ぐに病院に行き何針か縫って貰ったそうです。
その後、何日か休んだ後、そのお調子者が学校に来ました。

「もう直ったの。」
「うん。痛くなかったんだけど傷口が治るまで学校を休みなさいって言われてた。」
「どうしたの。」
「わかんない。」

傷の原因は本人にも分からないようでした。が、

「もしかしたさ。みんなで、お地蔵さんに謝ったじゃ。その時、一応謝ったんだけどさー。最後に、こんな事で怒ってんじゃねぇ。て思ってたんだ。」

お前は、そんなだから罰が当たるんだよ。と思いましたがそれ以上は言いませんでした。

やはり、こいつはお地蔵さんの罰が当たったんだと思います。

でもお地蔵さんって子供の味方ですね。
罰を与えるにしても本人は苦痛がないのですから。


<マサタカさん>