大 女

2000/05/10


今日、病院から退院しました。
オートバイの事故で怪我をし2ヶ月の入院後の退院です。
見舞いに来てくれた人たちには、

「雨の日にカーブでこけて。」

とだけ言ってあるのですが、本当の原因は他にあります。

ある日曜日、一人でちょっとしたツーリングのつもりで遠出をしました。
一般道の海沿いの道を潮の匂いを堪能しながら飛ばしていました。
午後の雨が心配でしたが、案の定夕方頃、ポツポツ降り出しました。

一般道の海沿いの道はくねくねと曲がりくねった道で安全のためスピードは控えめにして走っていました。
大きなカーブを抜けたとき、その先にずぶ濡れになって歩いている女の人が見えました。

「あんなに濡れて、可哀想に」

と思いながら通り過ぎバックミラーで顔を見ようと確認しました。
しかし、先の女の人はいません。

「あれ、居ない」

次のカーブが迫っています。
その時、後ろに座って自分に覆いかぶさる様なかたちでハンドルを握っている両手の上を押さえつけられる感覚がしました。
その為、アクセルを戻すことができません。
最初からスピードはセーブしていますがアクセルを噴かしたままカーブを曲がらなければなりません。
また、何かが体に覆いかぶさっているので、カーブを曲がる為に体を倒すことが思い通りになりません。

あわや、ガードレールにぶつかって海に落ちる寸前で対向車がクラクションを鳴らしました。
そのとたん、体に覆いかぶさっている何かが居なくなりそのまま横転してオートバイはガードレールに激突して止まり自分もそのオートバイと共に激突していました。

その瞬間の記憶に、フルフェンスの窓に覆いかぶさった黒髪が脳裏に焼き付いています。

そのまま、救急車が呼ばれるまで先ほどの対向車の男性が面倒を見てくれました。
救急車を呼んでくれたのもその男性です。

遠のく意識の中で、その男性は、

「あんたの後ろに、2mは有るかと思う女が笑いながら覆いかぶさっていて俺もビックリしてクラクションを鳴らしたんだよね。その後、ガードレールに激突したから俺のクラクションが原因だと思って救急車を呼んだんだ。でも、あんたの所に行った時にはその女はもういなくなってたんだ。」

その後、救急車で運ばれ入院と言うことになっのだけど、その後、その男性が警察にその大女の事を話し、

「海に落ちたのでは?」 

と言うことで大々的な捜索が行った様だが結局その様な痕跡は見つからなかったと言うことでした。
病院に警察が来て、その旨の理由を聞きに来たが身に覚えが無いと言う回答をした為、親切な男の人の虚言と言うことになったようです。

でも、姿形は分からないが事故直前に見た黒髪は女性のものの様でした。

<NNN00126さん>