看護婦さん

2000/04/04 


蓄膿症の手術で入院しました。

入院期間は2週間ですが、その間、両鼻の穴にガーゼをこれでもかというぐらい詰められその圧迫感で毎日頭の中がボーとしていました。

夜は、頭の圧迫感でなかなか寝られません。4人部屋ですが、同じ様な人が

「ヒィーヒィー」

唸っています。その声も手伝って眠れない夜が多く有りました。

ある夜、電灯も付けないで天井を眺めていると、

「カリッ、カリッ」

という音が聞こえます。静かな病院の中ですから些細な音も気になります。
その音が耳に付いて離れないので気になってしょうが有りません。

そこで、音の発祥源を探ろうと耳に神経を集中させて探っていました。但し、頭は圧迫感でボーとしています。
音の発祥源は、向かい側のベットの方から聞こえているようでした。そこはカーテンで仕切られているのでベットは直接見えません。
そこでトイレに行く振りをして除いて見ようと、ベットから起きあがり、窓越しに(相手のベットは窓側)中の様子を伺いました。
そこには、1人の看護婦さんがノミの様なものを持ってその患者の鼻の所を治療してる様でした。
見間違いかも知れないが、上唇を鼻の上まで持ち上げて鼻の中を削っているように見えました。
蓄膿症の手術の一つにそのような方法も有るとは聞いていましたが夜中に看護婦がベットの上でするはずが無いので見間違いと思いトイレへ行きました。

トイレの帰りに、顔見知りの看護婦さんに会ったので、

「前のベットの人は様態が悪いの?看護婦さんが治療していたみたいだけど」
「今日は、私と○○さんだけだからそんな人居ないと思うわよ。それに今見回ってきたけどみんな寝てたし、そんな看護婦さんは居なかったわよ」

そのまま、部屋まで一緒に行き部屋を入ろうとした時、気が付きました。

「ほら、窓越しに看護婦さん映ってるじゃ」

顔見知りの看護婦さんも窓越しの光景を確認し、つかつかとそのベットの前まで行き

「あなたは、誰」

とおもむろにカーテンを開けました。
顔見知りの看護婦は、怪訝な顔で自分の方を見ます。自分からは、顔見知りの看護婦の他にもう一人の看護婦の姿が窓越しに見えているので、一件落着かと思いその近くまで進んで行きました。

そして、ベットを見ると患者が1人寝ているだけです。

「あれ、さっきの看護婦さんがいない」

二人で窓を見ると自分たちの他にもう1人の看護婦さんが居ます。その看護婦さんがこちらの方を向き悲しそうな顔からいきなり

「ニヤッ」

と笑いました。

「ギャー」

顔見知りの看護婦さんが大声を上げました。
その部屋の患者全員は何事かと起きあがり、ナースステーションに詰めている看護婦が走ってきて、部屋の電気を点けました。
それと同時に、窓越しの看護婦も消えていました。
自分は この状態をどうやって取り繕うかで頭の中が一杯になっていました。
顔見知りの看護婦さんは泣いています。
その日は、取りあえずそのまま終わりました。

翌日から顔見知りの看護婦は病院にいなくなりました。
自分は、部屋を替えて貰うよう要請するとすんなり替えてくれました。

この病院で過去に何か有ったのでしょうか。

真相究明の為にその晩の事を先生や看護婦に説明し、いろいろ聞きましたが、何も教えてくれませんでした。

でも、来なくなった看護婦や部屋の変更があんなに簡単にできたことも含め何か有ると思います。

この病院は、海の良く見える某国立病院です。