田んぼの道

 


 

田舎の道を車で通っていると

「あっ、お墓だ」

と思いも寄らないところにお墓が有ることがよく有ります。
田んぼの真ん中、民家のすぐ横、又は、裏庭等、気が付かなければそのまま行き過ぎてしまう位、小規模な、その一族の人だけが入るお寺以外のお墓です。

会社に行く途中に有料道路が有るのですが、有料道路の料金所を回避する為、料金所の手前で一般道に入り少し遠回りですが料金所を過ぎた当たりまで田んぼの続く道を通って料金を節約していました。

田んぼの真ん中に通っている道は、真っ直ぐに続き街灯など無い為真っ暗闇となっています。農家はかなり離れたところに有り何もない田んぼの中を数分走ることになります。小動物の飛び出しに注意しながら走っているといつもと違った光景が目に入りました。

「誰かいる」

よく見ると、今までは気が付きませんでしたが田んぼの一角に5,6個のお墓が並んだ場所が有りました。

「墓参りしてるんだ」

おばあさんだと思うが、お墓の前にしゃがんで手を合わせている様でした。

少し変です。時間は、22:00です。そんな時間に墓参りしているはずが有りません。
百歩譲ってそんな人がいるにしても、街灯もない暗闇の中でそのお墓とおばあさんだけがはっきり見えたことです。

思わず車を止め、再度、見直しました。確かに、その部分だけボーと明るくなっています。その部分に明かりの光源は見あたりません。

”幽霊かな”

と思った瞬間、そのおばあさんが 

”すくっ”

と立ち上がりこちらを振り返る様な素振りを見せました。

”このままでは、まずい”

と何か危険を感じ急いで車を走らせ料金所を過ぎた有料道路の手前まで行きました。そこからも、お墓の有った場所は見えるはずなので、車を停車させ確認しました。しかし、そこには、まっ黒な田んぼが続いているだけでした。

翌朝、今までは気が付いていなかったお墓の有っただろう場所を注意深く見てみると、有りました。昨夜と同じ様な感じでお墓が立っていました。昨日おばあさんがいた近辺のお墓には、墓石の後ろに何という名か忘れましたが真新しい長い木の板が1本立っていました。

勿論、その後、特に夜の帰宅時は、料金の節約の為に、この道を通るのは止めました。