廃 墟

2011/08/12


廃墟って今ブームですか?

私は子供の頃から廃墟が好きで朽ちたホテルに忍び込み
生前の煌びやかな面影を思いながら埃まみれのロビー、客室などを
散策することが楽しみでした。
友達と一緒だと「ギャー、ウォー」とか奇声を上げるし、怖さが伝染するというか
もっぱら一人で散策するのが好きでした。

ある日、山の上のホテルの探検をした時のことです。
何回か行った場所だったのでしたが南館のみ行ってなかったので
チャレンジしました。

南館は、山の斜面を背にし木々が生い茂りコンクリートの壁がちらほら見える程度です。
本館からの通路は朽ち果て一度崖を降り急勾配の茂みを登って到着しました。

中は驚くほど綺麗で人が住んでのかと思うほどでしたがうっすらと埃が積もっているので
人が行き来していない証拠でした。
ロビーにはソファーやテレビがそのままの状態で残って
カーペットには私の歩いた足跡が続いています。

廊下を右に回り、左に回りと迷ってしまうかと思いましたが、自分の足跡をたどって
行けば帰れると思っていますのでどんどんと奥へ進みます。
どのくらいたったのか、いろいろ物色しながら進んでゆくと遠くの部屋から人の気配が...
何かしゃべっている様なのですが良くわかりませんでしたが不法侵入なので
「まずい。人がいる..」
と自分の足跡を頼りに抜き足差し足で戻りました。

でも、何十分経っても出口に着かないのです。
相変わらず、人の話し声がします。
日も傾きはじめています。
ふと思ったのが、こんなに歩いているのに出口に着かない、人の声が何時までもする。
だんだん焦ってきて、心の中で「落ち着け」と言い聞かせ暫く目をつぶり深呼吸をして
回りを見ると、部屋の中に自分足跡が円を描いてくっきりと残っています。
我に返り、部屋から逃げ出し出口に向かいます。
太陽は陰り山の頂上が赤く燃え、その下は薄暗くなっている状態です。

ホテルから出た瞬間、太陽は完全に沈み、私は茂みから転げ落ちていました。
落ちている時、その声が何を言っているか分かりました。

「もうすぐだったのにぃぃぃ...」



<斉藤さん>


ASUKA  ASUKAのお店