二階の台所

2003/01/24


17歳のアルバイトで、ガソリンスタンドに居たことがある。

スタンドには夫婦で切り盛りしている所長夫妻と、16歳の高校生、40歳前後の事
務の女性のSさん、近所に住んでいる30代の若者と私の6人で忙しく動いていた。
ある日、オイル交換作業をしている所長から

「悪いな〜、二階の俺の机から茶封筒に入った書類を持ってきてくれないか・・・」

っと言われ、二階に急いで上がっていった。
二階に上がるのは今回が初めてである、二階には8帖ほどの部屋が二部屋に別れていた。
階段を上がったすぐの部屋にはスタンドで使用する旗や、細々した備品が置かれていた。
奥に事務室があるらしい。奥の部屋に行こうとしたとき、進行方向左奥に小さな台所が
あった。っと、言うよりも誰かがそこにいてこちらを見ている気配がしたのだ。

「誰か居ますか?・・・所長が・・・」

次の瞬間、私の背中に冷たい物が走り突然肩が重くなった。

「あっ!」

この感覚は何度か味わっている。
人が死んだ場所や、因縁のある場所に行くと同じ事が起きる。
怖さを振り切り、奥の部屋に行き、大きな机の上に置かれた書類を取り、駆け足で下に
下りていった。下で休んでいた所長の奥さんが

「どうしたの?、慌てて(^^)、なにかあったの?」
「いっ・・・いえ・・・別に・・・」

所長に書類を渡し、仕事に就いた。所長はその書類を手に他の支店へ車で出かけた。

3時になりお茶をすることになった。たわいもない会話の後事務のおばさんが、

「さっきはどうしたの?、凄い顔していたわよ」
「実は・・・台所で」
「だっ・・台所で?」
「誰かが私を見ているような気がして・・・」

次の瞬間みんなが顔を見合わせ黙ってしまった。

「なにかあった場所に行くと・・・私は解るんですよ、感じるんです」

所長の奥さんが重い口を開いた。

「実はね、今のSさんが入る前に他の事務員さんが居たのよ、台所でお昼のご飯を
 作っていて、脳溢血でそのまま倒れて・・・、みんな下にいたから解らなかったの・・・、
 っで、そのまま帰らぬ人になって・・・」
「そうですか・・・」

それからお客さんが来てしまい、話はそのままになった。
それから私は二度とあの二階へは行かなくなった。

それから数年がたち、そのスタンドの前を通った。
スタンドは無くなっており、他の会社のビルが建っていた・・・。

今も・・・居るのかな?・・・・。


<kazuさん>