山の怪

 


小学校の3年からカブスカウトに所属していました。

ボーイスカウトの年少版でキャンプやハイキングなど楽しい良い思い出が数多くあります。
その中で、自分は小学校3年生の入団したばかりなので参加できなかったのですが、5年生以上のカブスカウトと6年生以上のボーイスカウトらで、静岡県の天城山を越える40kmのハイキングが有りました。
小中学生にとっての40Kmはかなりの距離で、弁当の他に予備の非常食(チョコ等)をもって始まります。

その日は、20名ほどが4−5名の班に分かれ数十分おきに出発します。終点の集合場所に付く頃は4時頃となります。
集合場所に参加者達はだんだん集まってきます。が、1つの班だけは戻ってきません。隊長達はすぐに警察等に連絡して捜索を始めましたが数時間後には日も暮れてしまいその日は彼らを発見できぬまま翌朝を迎えました。

その日の昼頃に、コースを大きく外れた地点でその班のメンバーは見つかりました。全員無事でした。警察、及び、隊長達に事の成り行きを聞かれ”道に迷いました”等の事を話し、警察からかなりの注意をされて帰宅しました。
この事件は、地方新聞に載るほどの大騒ぎになっていました。

その後、その班のメンバーからの聞いた話です。

その日、順調にコースを歩いていました。その為か、先に出発した班の連中に追い着きました。距離は、70m位だったそうです。

「あいつら遅いな」

などと言って前の班の後を着いて行くような形で自分たちの班は歩いて行きます。そうなると、コースの事など余り考えず前に見える連中の後をひたすら着いて行きました。この頃は、かなりの疲労がある時期なので何も考えずに歩いたそうです。
その内、空も赤くなりだし時計を見ると5時半を過ぎています。しかし、前に目標が有るので安心して歩いたそうです。

そのまま歩いていると、崖の手前に来ています、前方の班は谷を越えた所を歩いています。

「あれ、あんな所迄行っている。」
「おーぃ、おーぃ」

呼んでも見向きもしません。その時、冷静になってよく見ると前を歩いている連中は、ボーイスカウトの制服でなく、茶色の制服に似ている洋服を着ている様でした。

その後、前方の人たちが消えるのと同時位に日も暮れてしまいました。
リーダーが、

「真っ暗で、もう歩かない方が良い。しょうがないからどこかで野営しよう」

と大きな木の下にみんな集まり野宿する事にしました。
幸い季節は夏なので夜の寒さも厳しくなく各々非常食を食べ寝ることにしました。

夜中、”ザッ、ザッ、ザッ”と何人かの歩く音がします。救助の人だと全員思い、

「おーぃ、ここです」

と叫びますが応答が有りません。

その音はだんだん近づいて来ます。でも姿が見えません。
全員不気味になり寄り添って辺りを見回しました。その中の一人があるものを見つけたらしく小声で、

「ほら、あそこ。昼間の人たちだ」

そこから10m位離れた所を昼間見た様な人たちが歩いていたそうです。
月明かりに照らされてその姿が浮かび上がりました。

これはまずいと思い、 全員翌朝まで体を寄せ合いその場にジットしていたそうです。

「物凄く、怖かったんだよね。彼らに気づかれたらどうしようと、音も立てるのもはばかられたんだよね。でもその事を大人たちに言っても信じてくれなくてさ。」

山は怖いねと切実に訴えていました。

その後、数十年がたちあるホームページで、似たような話を見つけ、この記憶を思い出しました。

その内容も、

 ”山歩きをしている時、前方に同じように歩いている人が居る。”
 ”それは山の魔物で、この様な状況で人を山の奥深くに連れていってします。”

等の内容でした。

自分の身近に起きた事件と同じ内容の話が、他でも存在すると言う事を知り、山には何か不思議なものが存在する。と言うことを再度、確信しました。