光玉

2003/01/24


いつも楽しく、怖く読んでいます。
以前の「ホタル」のように、人魂の話がありますので、投稿させてくださいね。

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これは、母から聞いた話です。体験者は、母の友人だそうです。

今から、50年以上昔のことです。
体験者を、仮にAさんとしましょう。

ある夏の夜のことです。その日、Aさんは、一人で、映画を見にいったそうです。
当時は、まだテレビなんてありませんから、近くの映画館へ行くのが、とても楽しみ
だったそうです。田舎のことで、映画館を出て少しすると、田んぼや、畑ばかりに
なってしまい、街灯などほとんどありませんでした。Aさんは、提灯を持って出掛け
たそうです。

映画も終わり、これから真っ暗な道を一人で帰らなければなりません。Aさんは、
提灯に明かりを入れ、とぼとぼと歩き出しました。
途中、橋を渡らなければならないところがあります。
大きな川で、幅が、150メートルくらいありました。もちろん、真っ暗です。
ただでさえ、寂しいのに、川ですから、少し気味が悪くなったのでしょう。
鼻歌を歌ったり、少し早歩きになりました。
橋の真中くらいまで来たところで、ぽわっと、明かりが見えました。

「こりゃ、助かった。人だ。」

Aさんは、嬉しくなりました。もし、近くの人なら、一緒に帰ってくれるかもしれな
いし、たとえ、一瞬でも、、挨拶を交わすだけでも、気持ちが楽になるものです。
Aさんは、その人がやってくるほうへいこうとしました。
その瞬間、Aさんはギョッとしました。
その明かりがあるのは、なんと、橋からまったく外れた、川の上だったのです。

だんだんはっきりしてきた明かりは、人間の頭くらいの大きさで、ぼうっと光りながら、
川の上にふわふわ浮いています。
恐ろしくなったAさんは、提灯も放り投げ、一目散に逃げ出しました。
1度も後ろを振り返らずに・・・。怖くて振り返れなかったそうです。

どのくらい走ったでしょうか。良く知った家が見えてきました。
木戸をどんどん叩いて、家人が戸を開けると、中に転がり込むように入ったそうです。
その家の人に、さっきの顛末を話しました。すると、その家のおばあさんが、

「そりゃあ、光玉だ。」

と言ったそうです。

その話を聞いた人達が、うそじゃないのか、と疑ったところ、Aさんが飛び込んだ家
の人は、あの形相と真っ青な顔は、うそじゃあない、と言ったそうです。

しかし、一体なんだったのでしょうか?
人魂とは、少し違うような気がします。

もしかして、妖怪?!



<みんみんさん>