黒い影の正体

2002/12/04


私は特に霊感が強いわけではなく、不思議な体験というのも、 ほとんどした事はありません。  
ただ、私が、このような話に興味をもったきっかけをふりかえると、  ひとつの出来事が思い出されます。  

学校の怪談って、ありますよね?夜、だれもいないはずの音楽室から、ピアノの音 が聞こえるとか、人体模型があるいているとか。  
私がかよっていた小学校にも、そんな話がありました。
といっても、もう、ンっ十 年も前のことですが。いつの時代にも、同じような話があるわけで、同じような話だ から、ありきたりでつまらない...。
私はそんなことをかんがえる子供でした。  

ある日の夕方、わすれもの(笛か、ハーモニカだったかはわすれましたが)を取りに、二階にあるだれもいない教室へ入ろうとしました。
その時、今入ると何か起きるぞ、という予感がしましたが、バカバカしいと思いな おして、ガラリと戸をあけたのです。  
西日がさした教室には、誰もいません。放課後なのですから。  
誰もいない...。
いや、いる。あの机のあいだに。
みると、机と机のあいだから、黒い人影があたまをグッと持ち上げるようにして立ち 上がりかけるのを、はっきりと見たのです。  
それは一瞬のことで、西日の光が目に入ると、黒い影はあとかたもなく消えてしま いました。

不思議と恐怖感はなかったのですが、ドキドキと、心臓の音が高鳴るのが わかりました。  
この話をするのは、これがはじめてです。
大人になった今でも、黒い影の正体はわ かりません。だって、こんなのって、どの学校の怪談にもでてこないのですから。  
でも、いま思いかえすと、その時直感的に正体をみやぶっていたのかもしれませ ん。   

あれは、私のドッペルゲンガーだったのです。   
手には、私のわすれものが、にぎられていました。


<engelさん>