火の玉

 


今の空手は、新空手とか言って室内の小綺麗なところで稽古をするようですが、20数年前の子供の頃通っていた空手の稽古場はお寺の境内を借りて土の上を裸足で一所懸命練習したものです。

従って、稽古の後は境内の端、本堂の横の池で足を洗っていました。池の大きな石の上に腰を下ろして池に足を浸けて泥を落とします。

境内の稽古をしているところはスポットライトが当たり明るいのですがその池の場所は明かりのとどかず暗闇となっています。

後ろには、お墓が並んでいます。 最初は、不気味でしたが慣れとは恐ろしいもので何回か利用していると何も気にせず足を洗う事ができていました。

その時も、石の上に腰を下ろして池に足を浸けて泥を落としていました。すると、今まで一度も無かったのですが池の鯉がバシャバシャと何匹か騒ぎ始めました。

「あっ」

頭上を、ピンポン玉位の青白い(アルコールが燃えたような)光の玉が墓の方から頭上を越え向こうに方にゆらゆらと飛んで行きました。

「あれが、火の玉かな。綺麗だったね」

余り怖さはなく、神秘的な感じがしました。 火の玉を見たのはこれが最初で最後でした。