ゲタ

2002/04/25


私の住んでいる街は有名な某温泉街です。

昔からの住人なので、繁華街の中に居宅が有ります。
最近は不景気のせいか観光客もめっきり減りましたが それでも夜になると宴会後の酔っぱらいが街に溢れます。
夜8時くらいですか。
夕食も終え息子と居間でテレビを見ていました。
この位の時間になると先ほども言いましたが宴会後の酔っぱらいが 増えてきます。

「カランコロン、カランコロン。」

浴衣にゲタ。
温泉街の定番スタイルで歩き回るのでゲタの音が響きます。
時折、ゲタの音と共に罵声、歌声などかなりの騒音ですが慣れ親しんだ場所なので 私も息子も何も気になりません。
でも、その日は違いました。

「おとうさん。変なゲタの音がする。」

テレビに夢中になるとひとの話も聞かない息子が訴えます。

「カラ〜〜ン..コロ〜〜ン..カラ〜〜ン..コロ〜〜ン」

なにやら変に間延びした気味の悪いゲタの音が聞こえてきました。
その音は、訴える様に地獄のそこから聞こえてくるようです。
また、音の出どこも家の前の道からと言うよりも家全体から聞こえてくるような感じでした。
はっきり言って、震えました。
本当に恐怖、怖かったです。
私は昔テレビで見た、”牡丹灯籠”のシーンを思い浮かべました。
息子も同じ様です。
テレビなど見ていません。

10分位聞こえていたでしょうか。
急にテレビの音が大きく感じて、 「ハッ」 と我に返ったとう感じでした。
なにやら額に脂汗が滲んでいました。

「おとうさん。怖かったね。」
「うん。」 「げげげの鬼太郎かなぁ。」
「う〜ん。分からない。」

本当に返す言葉がありませんでした。
息子に牡丹灯籠と言っても分からないだろうから言わなかったですが あれは、絶対、幽霊だったのでしょう。
外は怖いので確認しませんでした。

ちなみに、鬼太郎って感じでは有りませんでした。


<とろろさん>