マンションの空室で

2002/04/08


私はビル管理の会社に勤めています。

とあるマンションの住人Bさんに連絡が取れないという電話が入りました。
最近はストーカーだのなんだのと物騒だし、Bさんは若い女性の一人暮らしなので、 よけいに気を使います。

「詳しいことはお答えできません。お電話があったことをメモでお伝えしますので  お名前と連絡先をお願いします」

というとちゃんと応えてくれました。
Bさんの部屋の郵便受けをのぞいてみると、かなりの郵便物やチラシが入ったままに なっていました。

数日後、保証人であるお父さんから

「娘と連絡が取れないので見に行って欲しい」

と依頼を受けましたが、立会いなしで部屋に入るのはトラブルの元ということで 職場に連絡すると、3ヶ月前に退職しているとのこと。
入院しているのでは?と近くの病院にあたると

「週一回通院する予定が前月の23日以来、来ていません。」

と言う答えが返ってきました。
とりあえず保証人さん立合いで部屋をあけることにしました。
部屋は普通の状態で、流しには洗ったコップがありました。
通帳や印鑑、財布も現金が入ったままあります。
お父さんと警察署に行って、行方不明の届を出しました。
それから一月たってもBさんから連絡はなく、お父さんの意向でマンションを解約しました。
転勤・結婚のシーズン間近だったことから、すぐにリフォームにかかりました。
仕上がりの点検をしていた時、誰かがドアを開けて入ってきました。
職人さんかな。と思っていると、今度はリビングに入ってきました。
その瞬間、首の後ろが逆立ち体が硬直しました。
そして私の横を誰かがすり抜けて いく気配がしました。
その気配はリビングをグルッと一周し、キッチンの戸棚や 収納のあたりをウロウロしているようなのです。
私は体の力を抜くようにイメージし、腹式呼吸を始めました。

「○○さん、」

と声がすると気配は消えてしまいました。
一緒にいた工務店の監督さんは

「いまの、何ですか?」

と冷や汗びっしょりでした。

「実は先日、掃除に入ったおばちゃんがここに住んでた人、亡くなったんですか?  なんか探しに来てましたよって言うんですよ。今のもそんな感じでしたね」

と言うのです。

先日、宅配便の問い合わせがあったのでお父さんに連絡しましたが、まだ連絡はありません。
彼女が行方不明になって1年が過ぎました。


<まあちゃん さん>