合図

2001/08/25


八月十四日の夜、ふと目が覚めて再び目を閉じると、白い着物を着た人が三人見えました。

目で見るのではなく脳で見る、って 聞いたことがありましたが、まさにそんな感じです。
まぶたの奥にそういう映像が写 るのです。
三人の顔ははっきりとわからないままでしたが、怖さというのは全くなくて、ほのぼ のとしたあたたかみのある、親しみのもてる、 という感じを受けたことだけを覚えています。
私は翌日、主人にその話をしながら

「お盆って、やっぱりここに帰ってきてるのかな あ。帰ってきてるんだったら、もっとはっきりと わかる形で合図してくれないかなあ・・・・」

なんて話をしていたのでした。
そして十五日の夜は、仏壇にたくさんのお供えものをして、お経も二回あげ、心から 手を合わせました。
その十五日の夜、やっぱり夜中に目が覚めました。
そしたら右手がとてもしびれてい て、でも金縛りとは違うのです。
それからし ばらくすると、今度は右足が重くなって私はそこで

「コホ、コホ」

と二回、せきをし たのです。

「なるほど・・・」

と思いました。
夜中に目が覚めてせきをすることなど誰でもあるかもしれません。
でも、それは私の 母からの合図だとわかりました。
わざとらしいせきなのです。

今から十四年前に枕元で

「コホコホ」

と二回、せきをす る音を聞いたことがあります。
それと全く同じ 感じでした。
母は喘息で亡くなったので、せきの音こそが私にはすぐわかる母の合図 なのです。
これから先も、もし夜中に目が覚めて、急にせきをしたら、母がそばに来ているのだ な、と思うことでしょう。

<グレイスさん>