新居

 


高校の時、新居に引っ越しました。 両親が、中古の家を購入したからです。

私は、部屋を貰い、うれしくて、うれしくて、とても幸せでした。

自分の荷物を片づけていると、部屋の真ん中の柱に木のお札が貼ってありました。家内安全のお守りだと思っていたので余り気にせずはずしてしまいました。

荷物もだいたい片づけ終わり、寝る用意をします。 寝るときには、真っ暗にしないと寝れない性分なので窓のカーテンを閉め明かりは全部消します。その為、部屋の電灯(紐を引っ張るやつ)の紐を別の紐に繋いで延長しベットの枕元に縛っておきます。真っ暗でも、電灯がつけれるように。

夜中、目が覚めました。

ベットの横のガードから中学生くらいの男の子が顔の鼻から上だけ出して覗いています。部屋は真っ暗のはずなので、その男の子だけがぼんやり光っていることになります。自分の顔からは20cm位しか離れていません。

怖い。
どうして良いか分からない。

取りあえず電灯を付けようと枕元に縛っておいた紐を探しますがなかなか見つかりません。そのうち、自分の手を誰かの手で触られる感覚がします。頭の先から爪の先まで、”ゾクゾク”と寒気がします。声は出ません。

しばらく探していると紐は枕元からはずれて、電灯にぶら下がっていることが分かりました。(直感的に)

電灯まで手を伸ばすには、横のに見える顔の上に手を延ばさなければなりません。

決心し紐に手を伸ばしました。紐が手に触れ掴かんだと同時に、自分の腕も ”ガシ”と何かに掴まれました。が、それと同時に電灯のスイッチも付きました。
まぶしくて、しばらく周りは見えません。次第に目が慣れてきたので周りを確認しました。

何も居ません。有りません。

でも、枕元に縛っておいた紐ははずれていました。その紐は、一度付けたらはずさないつもりなので、しかりと”こぶ結び”にしておいたのに解けていました。

翌日、母親に昨夜のことを告げると

「寝ぼけてたんだよ。でも、お札は、元のところに戻しておきなさい」

と言われました。

次の日から現在に至るまでその男の子は出現していません。
両親が、曰く付きの家を購入することは考えられないし、極端に安価で購入したりしたわけではありません。又、近所の噂で”実は..”などの話も聞きません。

でも、あのお札は今でも張ってあります。このお札に関しては、家族の間では一切話題に上らない様に暗黙の了解となっています。