お線香

2000/12/07


これは、実際経験した私はとても怖かったのですが、読む人にとっては笑い話になっ てしまうかもしれません。

私は、どうも鈍感なタイプのようで、何か不思議な体験を しても、その時は原因がさっぱりわからず、首をひねるばかりなのです。
そして、何年もたってからそのことをふと思い出してみて、ようやく客観的にその時の状況を考 えられる、というパターンが多いようです。
といっても、若い時の話ですが。
最近で は、いろんな人のいろんな話を見聞きするうちに、その時間的誤差(事象が起きてか ら、原因を思いつくまで)が少し縮んだようですが。 

さて、話はアロマテラピーという言葉が世間に流行りだした頃のことです。
部屋で お香を焚いてリラックスする、というような記事を雑誌で読んだ私は、田舎というこ ともあって(言い訳)お香なるものがどこで売っているのか検討もつかなかったのです。
それで、お香なら線香でもいいんだろう、と勝手に解釈をして、自分の部屋に湯 飲みを置き、階下の仏壇から線香を持ってきて、仕事から帰ると線香を焚きました。
でも、一週間も続けた頃、何だかどうでもよくなって、結局やめてしまったのです。

たぶんその頃からだったと思います。
夜、眠りにつくやいなや、強烈な金縛り。
金縛 りは解こうとすればするほど、相手が力を強めてくるという感じでした。
そして、そ の力は日ましに強まり、体は大の字に押さえられ、自分の魂は体から抜けて、階下ま で引きずり下ろされブンブン振り回されるという強烈なものでした。
それはたぶん一 ケ月くらいは続いたと思います。
一日も欠かさず、毎日です。
ちょうどその頃「エルム街の悪夢」という映画が公開された頃でしたが、まさにあの 映画が現実になったような。
眠りにつこうとすると、別の世界に引っ張り込まれると 言う感じです。
両手足をしっかり、誰かによって押さえられる感じがとても異様だっ たので、

「これはもしかして、生き霊かも?」

とその時の浅知恵で思いました。
実はその 頃、いい加減別れたいのに別れられないという関係の人がいたので、その人が自分に 対して持ってる執着みたいなものがその強烈な金縛りを起こしているのだと思ったのです。
私は電話をして

「夜中に私のこと考えるの、やめてくれる?生き霊でもとばしてるんでしょ?わかってるんだから」

と、今に思えば恥ずかしい言葉を投げてしまっ たのです。
相手はキョトンとして取り合ってくれません。
別れたい、と思いながら も、その人がうちに泊まる日がやってきました。
私は

「あーあ、くされ縁ってやつか な。でも今日はここにいるわけだから、もうあの金縛りに合わずにすむ」

と反面、安 心したのです。
でも、ヤツはやってきました。
別れられない彼が隣でいびきをかいて いる私の部屋へ。
隣に寝ているのに、手が届かない。起こそうとしても起こせない。
その夜も長い金縛りが続き、天井から床までブンブン振り回され続けました。
金縛り の正体は、彼の生き霊ではなかったのです。

ではどこからやってきた何ものか?
見え ない私にはわかりませんが、心あたりがあるとすれば、あの線香がよくなかったので しょう。
お線香って、仏壇やお墓以外で焚くものではありませんね。
得体のしれない ものを呼んでしまったのかもしれません。
逆に考えると、お線香ってやっぱり意味の あるってことでしょうか。

ま、私以外でこんな間抜けなことをする人はいないと思い ますが、みなさんくれぐれも、お線香は焚くべき場所で焚きましょう。


<グレイスさん>