白い手が..。

2000/11/24


大学時代の話です。

当時の彼女(今、奥さん)に頼まれ(脅され)て普通免許証を取得しました。
しかし、貧乏学生だった自分は免許取得でも青色吐息だったのにマイカーの購入など考えられませんでした。
彼女はどうしてもドライブがしたいのでどこからか5万円のシビックを見つけてきました。

当時でも、超安値の車には何か有ると言う話を聞いていたんで購入を躊躇していましたが、どうしても欲しい彼女は、

「大丈夫。その車はね、お母さんの友達の妹が働いているバイト先の知り合いの車だから」

言うことでした。
彼女の話を聞いている内に”知り合いの車なんだ”と妙に納得してしまいました。
後から考えると、全然、人的関係が分からない人の所有車でした。

購入当日は、なんだかチョットやつれたカップルがその車に乗って約束の場所に現れました。
この時安心したのは、”彼女の知り合い”(実は全然知らない)と言う事と、その車が価格に見合う”ボロ車”だった事です。

「初めまして、○○です。」
「...。」
「5万円で良いですか。」
「はい。」

取引は成立して、1週間後引き渡しと言うことになりました。

1週間が過ぎ車と現金を交換して車を取得しました。
初めて所有した車とあって、あばたもえくぼ的に、このボロ車を大切にし毎日掃除したりしていました。
彼女は早くドライブに連れて行けとうるさいのですが、暫く練習してからと1週間ほど1人で乗り回していました。

まだ運転に慣れていないので運転中はよそ見など”とんでもない”と言う状態でしたが運転中気になるところが一つだけ有りました。
助手席の方から白い物がチラチラ見えるのです。
赤信号で止まったときとかに確認するのですがその時は異常が見あたりません。

そうこうしているうちに1週間が過ぎドライブの日がやってきました。
彼女は、満面の笑みを浮かべて、弁当やらお菓子やらを持って出かけました。
色々乗り回して帰宅時は夜になっていました。

「明日も、どこ行こうね。」

など、私の疲労は考え無しで約束させられました。
その内、いつもの様に運転中、助手席の方から白い物がチラチラ見え始めました。
今日は彼女が居るので確認しようと、

「ねぇ。そっちに白いものが見えない?」
「...。」

返事がないので寝ているのかと思い、少し大きな声で、

「ねぇ。そっちに白いものが見えない?」
「う、うん。」

その内、赤信号となり停止後彼女の方を見ると真っ青な顔をして絶句している彼女の顔が有りました。

「どうしたの?」
「白い手が..。」

彼女の見たものは彼女の前のエアコン吹き出し口から出たり入ったりしている白い手だったそうです。
その車は、翌週廃車にしました。

売ってくれたカップルに確認したのですが、

「知らない」

の一点張りでした。


<バフさん>