踏切

2000/10/24


遠い記憶です。

まだ幼稚園だったと思います。
母親と二人で近所の商店街に買い物に行きました。
家から商店街までの間に踏切が有りました。(今もあります。)

商店街に行くと、オモチャ屋やお菓子屋などが有るのでうれしくてうれしくて仕方がありませんでした。
その時、母親は身重で、

「たかゆき。チョット待ちなさい。」

と言いますがお構いなしにどんどん商店街に向かっていました。
丁度、踏切に差し掛かったときは、母親から50メートルは離れていました。
母親は、急ぎ足で向かってきますが、その時は遊びの一環の様にどんどん踏み切りを渡っていました。

渡り終え、暫く進み振り返ると母親が向こう側の踏切の前に立ち止まって何か言っています。
その顔を見たとたん、何故か無性に怖くなり母親の元へ戻りたい衝動がわいてきました。
それと同時に母親の方へ向かいました。
その時の母親の顔は物凄く心配そうな、どうして良いか分からないと言った感じでした。
踏切差し掛かったとき、

「電車が来るよ!」

と手を鷲掴みにした人がいました。 その時、

「カンカンカン」

耳をつんざく様な踏切の音が聞こえました。
よく見ると遮断機も既に下りていました。

私は、訳が分からず、ただ、怖いと言うだけで泣いていました。
暫くして、電車が通過し母親が夢中で身重の身体をむち打ってかけてきました。

「あぁ〜、良かった。」

安堵のため息と同時に母親も一緒に泣いていました。
母親は、踏切の遮断機が下りたにも関わらず自分の方に向かってくる姿を見てどうすることもできなかったと言います。
電車はもう間近になっています。
電車が通過する間、半ば諦めていた母親は電車の通過した後に踏切の無効で泣いているのを確認して安堵したそうです。

「さっきねぇ。誰かが渡っちゃ駄目。言ってくれたんだ」

と母親に話すと、

「誰もいなかったよ」

とその時その場所には、他の人は居ず、自分1人しか見えなかったようです。

あの助けてくれた人はだれなのか。
きっと、守護霊さんが助けてくれたんだ。と言うことになりました。

その後、年月がたちその話が何かの拍子に話題になったとき母親は、当時、小さかったので話さなかったが、今なら大丈夫だろうと言うことで話してくれました。

その時、母親は、耳の元で呟く声を聞いたそうです。

「遅いよ。もう、仲間になったよ。」

と言う声を聞いたそうです。

「でもきっと、守護霊さんの方が力が強かったんだねぇ」

と言っていました。

<たかゆき さん>