お線香

2000/09/30


その日は、とても暑い日でした。

お彼岸と言うことでお墓参りに行きました。
先祖代々のお墓に行き、水をあげ、線香を供える時、ライターがなかな見付かりません。

「無いなぁ。さっきここに入れておいたのに。チョット借りてくる。」

と主人は本堂の方へ歩いて行きました。
その時、息子が真新しい線香を一本持ってきました。

「ママ。お線香。」
「どうしたの、そのお線香。」

その一本の線香には、たった今、点けたばかりの様に火がついていて一筋の煙が空に向かって延びていました。
揺れることなく。

「今ねぇ。叔父さんに貰った。」

周りを見回しましたが、誰もいません。
周辺のお墓を確認しましたがお線香の煙があがっているお墓はありません。
でも息子は確かに真新しいお線香を持っています。

暑さとうるさい蝉の声で頭がふやけている様でそれ以上深く考えるのは止めそのお線香を先祖代々の墓にお供えしました。

この時、怖さは全くありませんでした。

きっと、主人のご先祖様がくれたと思っています。

でも、今考えるととても不思議です。


<pockyさん>