亀石峠

 


私は仕事の関係上、帰宅が遅く夜中に帰ることが多くあります。

職場から自宅までの間には、伊豆の亀石峠(大仁−伊東)を通って帰ります。亀石峠は、土曜の夜などは、多くの”走り屋さん達”(言葉が古いですか?)が居るので賑やかですが、平日のこの時間は走っている車も少なく非常に寂しい峠道となります。

ある夏の日、いつものように0時をまわった時間に亀石峠の頂上に着きそこから伊東に向かって下り坂を進んで行きます。最初に大きな右カーブが有るのですがそのカーブの手前の歩道(線が引いてあるだけ)をランドセルを担いだ子供が歩いていました。

「あ、子供だ。乗せていってあげようかな」

と思いました。何せ、そこから町まではかなりの距離が有り(7km位?)車でも15分くらい掛かる道のりです。しかし、近頃の子供は親切心で声をかけると誘拐犯呼ばわりされるのでやめました。まあ、カーブの先に親の車が止めてあるのだろうと思いそのまま行き過ぎました。

しかし、駐車中の車は有りません。

「あの子、かわいそうだな。戻ろうかな。」

と思いましたが、よくよく考えると、この時間に子供が居ること自体不自然だし、もし居ても、ランドセルをしょっているのは余計不自然です。考えるのは怖いので、今のは目の錯覚と自分に言い聞かせ、ステレオをガンガンにして峠道を下りました。
峠道の途中の宇佐美観音さん(10m位の高さの観音像)の前を通た時は一応、”変なことが起きません様に。”とお願いして帰宅しました。

その後、しばらくは何もありませんでしたが、ある夜、最初の大きな右カーブの手前の歩道に今度は30歳位の女性が歩いていました。この時は、出来るだけ見ないようにして急いで家路を急ぎました。
宇佐美観音さんに”もう、絶対変なものは見させないでください。”と心に念じ帰宅しました。

先のランドセルの子供と30歳位の女性は何か関係が有るのでしょうか。又、あの場所で、”誰かが死んだ”等の話は聞いたことが有りません。

でも何かあったのかな?


<Y.Nさん>